CM題名:アサヒフードアンドヘルスケア:ミンティアCM cold smash偏
株式会社:アサヒフードアンドヘルスケア
放送期日:2009年3月。
概要:レオタードの女性が、何人も踊っている。彼女らは、一様に、製品のロゴ付きのユニフォームを纏っている。このようなCMにおいて、性的なアピールを強調するのは、今に始まったことではあるまい。
何処かで聞いたような歌声にあわせて、踊り子達は。フォークダンスよろしくうららかにダンスを続ける。その合間に入るお笑い芸人のカットは、何を期待してのことだろう。素人の私は、理解に苦しむ。
それにしても、この舞台設定はなんだろう。おそらくは宇宙船だと思われる。まるで、70年代のハリウッド映画に出てきそうなセットは、ただ、舞台が宇宙であることを訴えたいだけなのだろう。
宇宙船から見える、地球は、このCMのツボだと思われる。この背景だけが、このCMを価値あるものしている。
CM、my story
私は、このCMから自分なりのストーリーを編み出した。元々、CMにはストリーというものが、あるらしいが、これはあくまで、わたしのオリディナルである。本編とは一切、関係がない。
ガイウス歴3408年、人類は、200万立方光年に渡って、宇宙に広がっていた。しかし、その100年後、たった2名を除いて、人類は全滅することになったのである。
「ブイヨン大佐、大丈夫ですか」
「タナカ中尉、生きているものは貴官だけか」
ブイヨン大佐は、自分を助け起こした青年仕官を見上げた。
「ウウ・ウ・・ウ!」
「大佐!?」
タナカ中尉は驚いた。大佐の胸からは、ドクドクと血が流れてくるではないか。それは、心臓の鼓動に、合わせて、彼等が所属する軍服を朱に染めていく。
傷口を押さえる左手は、ザクロになっていた。それは、もはや手と呼べるものではなかった。単なる血と肉の塊と化していたのである。
今から、数分前、この宇宙船は、巨大な宇宙風を受けた。それは信じられないほど破壊力を持った次元波を伴っていた。
圧倒的な破壊を含んだ光球。それは、200万立方光年の質量を誇っていた。それが、人類が拡大した範型を示していたことは、何という皮肉だろう。
じっさい、人類が10000年を掛けて、こさえた文明の力とやらが、凝縮されていたのである。だが、それを人類の英知と言えるのだろうか?
中尉は笑いたくなった。
「ウウ・・ウ・ウ・、さきほどのエネルギーはたいしたものだったな、まさかガイゼルはあの兵器を使ったのか?」
その兵器は、たとえば、21世紀で言うなら、熱核兵器を指すのだろう。しかし、今回使われた兵器は、7000年前のそれと比較しようがない。核兵器一発でも太陽ひとつ破壊できないが、それを使えば、銀河系ひとつが無に帰すほどの衝撃を秘めていたのだ。
そいて、実際、使われた。
「大佐、実に申しあげにくいのですが ・・・・・・・・・」
「せ、生体反応はほぼ0か」
「うううう。、はい、230万立方光年に範囲を広げて、生体センサーを使用しましたが・・・・・・・」
「人類滅亡か」
「・・・・・・・」
もはや、中尉は何も言えなくなった。10000年もの、栄華を極めてこの日、人類は名実ともに滅ぼうとしているのだ。チキュウというちっぽけな惑星から、はじまり、宇宙の隅々まで広がった人類が・・・・・・・・!栄光のきざはじを必死になって、駆け上がった人類が!
「中尉、この船のエネルギーはあと、どのくらい残っている?」
「はい、560444フォンほど」
「では、3万光年ほどのワープなら可能だな」
「はい、損傷はひどいですが、なんとかすれば、技術主任としての意地にかけて、しかし、どうしてこんなときに、もはや、まさか・・・・」
「そうだ、チキュウに行ってみたい。最後に、見てみたい、母なる星を、それが最後に残った生き物としての義務だと思う」
「はい・・・・・・。技術主任として最後の意地を見せてみます」
中尉は、瀕死の大佐を寝かしつけると、機器に向かった。
(しかし、ワープに大佐の躰が保つだろうか?)
さもならん、もう、何もかも終わったのだ。せめて、死にゆく上官、いや、自分のためにもチキュウという惑星に行ってみたい。いや、戻るのだ、母なるチキュウに。
(それにしても、チキュウとはどんな意味なのだろう?)
嘗て。中尉は考古学者の友人に聞いたことがある。やつらは、10000年前の錆び付いた機械と友達をやっているのだ。いつも、暇人だとばかにしていた。聖なる戦いをみんながやっている時に、何しているのか?と。
(思い出せない。まあ、いいか、チキュウ?何語なのだろう?美しい響きた。あれ?)
中尉は、ふと、ポケットに手を突っ込んでいた。何か硬いものが。
(そうだ、アンディからもらったディスクだ。なんでも、7000年前の情報が入っているらしい)
「大佐、まだ人類がチキュウにいたころの、立体映像が見えるかもしれませんよ」
「そうか・・・・・・・・」
瀕死の大佐は父親に見えた。本当の父親は、彼が生まれる寸前に、宇宙船ごと吹き飛ばされたらしい。今、目の前の人間こそが父親だ。そして、これから向かおうとしているチキュウが母親だ。
中尉はメータの数字を睨みつける。
(なんとしても成功させねば! )
最後に残った知性と体力を、すべてここに集中させるのだ。10000有余年に渡る生命の歴史。その最後の一歩を担う自分たちこそが、その代表なのだ。
知性。
すべての現象で、もっとも美しく、また不可解と思われた。それが、生命の歴史の中では、相争い、滅亡の原因となった。また、10000年も残る文化を担う燃料にもなった。
今、最後の輝きを取り戻すのだ。それが1光年の先にも響かせ得ない光だったしても・・・・・・・・・・。
もはや、その光を受け取る目は、ここ以外の何処にもいないのだから、そんなことはどうでもいい。
「大佐、もう少しですよ! あ、立体映像が!7000年ぶりに蘇ります!」
ラララララ・・・・・・・・・・。
それは音楽とは思えないほど、快活なメロディだった。しかし、何処か懐かしい。哀愁を帯びたメロディだった。
「ウウ・・ウ・ウ・・ウ・ウ!」
中尉は、涙を止めることができなかった。
滅ぶのだ。滅んでしまうのだ。さしずめ、今、流れているメロディは、そのレクイエムだろう。
「なんだ?あの恰好は?!」
失われゆく視力が捕らえた映像は、踊る女性たちだった。どの女性も、容姿が優れている。それに、比べて、奇矯な服装と踊りは、いやでも耳目を引いた。
「はははは!」
これが最後に見る同輩とは!
大佐は、7000年前の先祖に、笑いかけた。しかし、とたんに、すまない思いがあふれだした。涙を止めることができない。
無邪気に笑う美女たちは、7000年後に、再生されるとは夢にも思わなかっただろう。
「大佐、この映像はもともと二次元です。3000年前に、それを3次元化したらしいです。当時は、どうやら過去の対する尊敬の念があったらしいですね。」
「ああ、今となっては歴史などと軽蔑の代名詞になってしまったが・・・・・」
「彼女らも、想像すらできなかったでしょうね。7000年後に、こうして復活するなどと・・・・・・・・うう」
ララララララ・・・・・・。
「それも、人類の最後の場所にな、ああ、なんだか躰が動く、中尉、肩を貸してくれ・・・・・・・・」
今となっては、大佐の健康を気遣う必要はなかった。その言葉を呑みこむ。そして、女性たちの元に、大佐を連れて行く。
「本官も踊りたくなりました」
「そうだな、一緒に踊ろう! あ、み、見えた! あ、あれが! チキュウ?」
「ああ! 何て、美しい!」
二人は、あふれてくる涙のために、虹彩が溶けてしまうと危惧した。
ああ、溶けてしまいたい! あの海に!
宇宙船から見える青い塊は美しかった。二人が見たどの物体よりも、輝いていた。この宇宙のすべての生命の旋律を内包しているように思えた。
二人は、母親に抱かれて、その瞼を永遠に閉じた。きっと、二人はあの青い海に溶けて行ったに違いない。
踊り子の一人は、きっと、そのように想像しただろうか?
しかし、事実は違う。違うのである。二人に悪いが、チキュウは映像にすぎないのだ。
その映像のあまりの迫力のために、実在と誤認してしまったのである。
しかし、生まれてからずっと戦い続けてきた。その疲れた脳ではしょうがあるまい。
もしも、アンディならば、その嘘を見破れたかもしれない。
しかし、嘘も方便という言葉がある。
見破れることが、二人の幸福につながったとは言えないだろう。
その答えは、この歌にある。
この歌に、結論をまかせて、この物語は終曲する。
ララララララ・・・・・・・。
参考:アサヒフードアンドヘルスケア:ミンティアCM cold smash